「は?」
電気と聞いて雷やナマズが貴彥の頭に浮かぶ。
「戀とは體中を駆けめぐる電気のこと」
「……物理じゃないんだから」
「本當だぜ。試してやろうか?」
「試す?」
広夢はぱっと貴彥の手首を摑み自分の方へ引き寄せた。「何をする」と言い終わらないうちに、手の甲へ口づけされた。
その瞬間、手から全身に痺れが走った。
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広夢はゆっくりと手を離すと、にっこりと笑みを浮かべた。
「どう? わかったかな」
賭け(二)
それから貴彥の苦悶の日々が始まった。部室での一件の後、広夢を常に意識してしまう。しかし彼の態度は今まで通りで何の変化もなかった。
朝教室で顔を合わせるところから始まり、授業の間の休み時間、體育館や他の教室への移動、晝休み、放課後の部室、自分は常に広夢と一緒だったことに気づかされる。
話は普通に出來ているつもりなのだが、まともに目を合わせられない。肩や背中をちょっと觸れられるだけでもどきりとする。それを相手に気づかれないようするのが一苦労で、貴彥は家に帰ると入學したばかりの頃より疲労感でいっぱいになった。
一人になるといろんな考えが襲ってきてはそれらに悩まされた。
あの痺れは本當に戀をあらわしていたのか、自分に戀が理解できなかったのは男に興味があるためなのか、広夢はふざけただけなのに何か気づいたらどうしようか……。
しかし何一つ答えが出ることはなかった。
數日が経ち、黃金週間の真っ只中の五月一日。貴彥と広夢は新聞部の三年から、今日と明日中に新聞を印刷し、各教室へ配布するよう命じられた。印刷は一年坊主の役目と伝統的に決まっているのだ。B4の紙の表裡に印刷するため、上下逆にならないように特に注意された。あとは各教室の配布物を入れる戸棚へ分けておくだけ。
広夢は中學でも新聞部だったので、大まかに説明されただけで手順を理解し、貴彥はその手伝いをするだけであった。
新聞部の部室に二人きり。どんな會話をしようか困る貴彥であったが、広夢はさっさと終わらせてしまいたいようで、ちょこちょこと指示を出す以外は黙々と機械的に作業を続けた。
印刷が終わり、クラスの人數分ずつ數えて仕分けする。付梗�蚰坑·速Nり二階の職員室へ二人で持って行った。職員室の入り口にある戸棚に、新聞を軽く二つ折りして入れていった。
「は��⒔Kわった」
貴彥は軽くため息をつく。
「あとは先生たちの分。これは顧問に渡したらいいのかな」
広夢は獨り言のようにそう言うと、顧問の教師の機まで行った。貴彥も後を追う。教師の姿はなく當惑していると、二人の擔任が聲を掛けた。
「どうした、お前ら」
「俺たち新聞部なんですけど、先生達の分をどうしたらいいかわからなくて。顧問の先生はいないみたいだし」
広夢は持っている新聞を示す。
「ああ、それなら預かってやるからもう帰っていいぞ」
「え、いいんですか?」
「もう六時近いだろ。ご苦労さん」
じゃあお願いします、と新聞を擔任に渡した。教師はそれを自分の機に置き、ごそごそと白衣のポケットを探る。